ホイールローダの経路追従制御のMATLABコード
はじめに
建設機械の一種に,ホイールローダがあります.
操舵機構が普通のクルマとは異なり,アッカーマン機構ではなく,
前後輪の中間にある屈折点で車体が折れ曲がることにより進行方向が決まります.
こうした構造は,
中折れ式,アーティキュレート式などと呼ばれます.
旋回時でも前後輪が同じ位置を通過する(=内輪差・外輪差が生じない)ため,
不整地でも安定して走ることができる,
作業時の細かい位置決めがしやすい,
といった利点があり,建設機械・除雪車などで利用されています.
ちなみに,こうした車両を日本の公道で運転する場合,
小型車両の場合は,小型特殊自動車免許(小特)が,
中型より大きい場合は,大型特殊自動車免許(大特)が必要になります.
また,バケットで土砂を掬ったり除雪したりする場合には,
車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習 を修了する必要があります.
以前,大特の免許を取った時にホイールローダを運転したのですが,
非常に独特な動きをしており,車両モデルとしてどのように表されるのか気になったので,
先行研究の結果をもとに,直線経路追従制御のシミュレーションをしてみました.
車両モデル・制御則
以下の論文をもとに,MATLABのサンプルプログラムを起こしてみました.
アルゴリズムの詳細は,以下論文の通りです.
城間直司,石川哲史,井上康介,福岡泰宏,森善一,
"車体屈折式操向車両の非線形直線経路追従制御"
日本機械学会論文集 C編 76 巻 (2010) 763 号
www.jstage.jst.go.jp
車両モデルは,タイヤ横滑りが生じないと仮定した,幾何モデルになります.
ホイールローダは,作業時であれば 10 km/h 程度で走行するため,
ダイナミクスを考慮しないこのモデルでも,車両の特性を記述することができると思われます.
実物のホイールローダでは,油圧アクチュエータにより車体の屈折を行うため,
求まった操向制御入力 に基づいて車両を動かすことが出来ると考えられます.
シミュレーション結果
赤色の目標直線経路に対して,5 m のオフセット開始位置からスタートした車両が,
追従していることが分かります.
MATLABサンプルコード
下記のGitHubリポジトリに載せています.
github.com
車両パラメータは,中型ホイールローダであるコマツ WA100-8をもとに,適当な値を決めています.
http://www.komatsu-kenki.co.jp/products/download/pdf/wheel_loader/WA100-8.pdf